僕にとっては第1回、実際には今年で33回を数える小豆島まつり。
(前回の記事 “Setouchi Art Trip Day3”)
山車もありませんし神輿もありませんが、無秩序な人混みも大仰な客引きの声もありません。
広場に夜店がたくさん出ていて、焼けたとうもろこしなんかの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐります。
ちょうどお腹がふくれた時分に、目の前の沖合いから花火がぽつりぽつりとあがります。子供も大人も一様に足を止め、祭りの終わりを惜しむようにぼんやりと中空を仰ぎ見ます。
もし自分にも”田舎”があったならば。幼いころからよく想像していました。
普段の生活では縁のない新幹線に乗って行く。あぜ道を横目にあてもなく散歩して、神社の境内ではちいさな夏祭りをやっていて、テレビをつければいつもとは違う番組が映る。実際のところそんな田舎を持つ人は多くはないのかもしれないけど、帰省から戻った友達らから溢れる”田舎”というキーワードはいつだってそれらを想起させ、僕は歯がゆい思いをし続けてきました。
小豆島はまさしく僕の田舎、もとい、僕の頭のなかにある田舎そのものだったのです。
ゆるやかで、あたたかい。最後の花火を見送りながら、既視感の正体に気が付きました。
そうそう大事なことを忘れずに。昨晩僕らを逆ヒッチハイクして裏庭のスペースを貸してくれたのが柴田さん。一旦お家で荷物を下ろさせてもらい大分身軽になった僕らは、上記のようにお祭りを堪能することができました。本当にありがとうございました!
コンクリートとは一線を画す寝心地抜群の裏庭テント泊から一夜明け4日目。
今日は小豆島を巡る一日です。
起床後おおまかな観光順路を決めておきます。広い島なので全て見てまわる訳にはいきません。
ちょうどそのタイミングで柴田さんが裏庭へ。一宿の礼のあと今日の予定を訊かれます。
とりあえず夜までは小豆島を散策してみようかと思っているんです。すると
「それだったらうちの車使っていきなよ」 と。
「いやいやそれはさすがに悪いですよ!泊めて頂いただけで十分です!」 と返すも
「免許持ってないわけじゃないんだろ?」
いやまぁそうですけど。さすがに車はちょっと申し訳なさすぎるし。
早いついでに小豆島のハイライトを写真でサクッと。ブーン。(文章にすると長くなるので)
移動手段が車になったおかげで短時間で予定より多く展示をまわることができました。
お目当ての展示 ワン・ウェンチー『小豆島の光』 などは山間部にあり、これを歩いて目指していたらと思うとぞっとします。山と棚田に囲まれた場所にひっそりと、しかし確実な存在感で僕らを迎えてくれた『小豆島の光』。およそ5000本の竹を組んで作られた建造物で、実際に中に入ることもできます。夜間はLEDでライトアップもされるようです。
こういうスケール感が瀬戸内のアートの良さなんだな、と強く思いました。東京でも見られるようなものは、東京で見ておけばいい。
地中美術館然り豊島美術館然り、この贅沢な空間の遊ばせ方は瀬戸内でしか味わえない。
小豆島をまる一日堪能したあと、展示スタッフとして働いている柴田さんに会いに行きました。
ガソリン代なんて無粋だろうなと思い代わりに買っていったアイスを、「これは生き返るなぁ」と美味しそうに食べていた情景が忘れられません。
またどこかでお会いできることを願いながらお別れをし、僕らはフェリーに乗って一路高松へと向かいました。僕にとっては今回の旅で初めての四国本土。高まる!
果たして、高松はとてつもなく都会でした(その前の数日を島々で過ごしていたからというのもあるけれど)。Y-Parkとは別のホテルを予約していたので一旦パーティーは解散。各自洗濯や着替え、シャワーを済ませ、島にはない繁華街へと歩を進めます。自分の知らない街ってなんでこんなに心躍るんだろう。アート?そんなのどうでも良いからネオン街へ羽ばたこうぜ!
数日ぶりの文明(“夜になっても店が閉まらないこと”の意)に目をギラつかせながら一軒目に選んだのが、地域名物『骨付鳥』のお店。高松周辺ではこの骨付鳥を扱うお店がたーくさん。「さっき寄ったGAPの店員さんに訊いたらここが良いって!」というY-Park情報を信じ、この『骨付鳥屋台』を選びました。これがまた美味。正解。ビール。おかわり。
親鳥と雛鳥の2種類があるのですが、僕は親鳥派。雛鶏に比べると身は固いけれど、だからこそただのチキンソテーとは違う趣があります。あぁ居酒屋って本当に良いですね。肴が良ければお酒も進む。相席していたカップルとの話も弾みます。
あー気持ちが良い。そういえば向こうの席にひとりで座っている男の人、小学校のとき同級生だった友達に似てるなぁ。家が近かったから小さい頃はよく遊んだけど、実際もう15年ぐらい会ってないなぁ。ドッペルゲンガー話のネタにもなるし、ちょっと写真でも撮らせてもらおうっと。
「突然すいませ~ん、クワバラさんじゃないですよね?」
「えっ、誰ですか?」
「あ、僕ですか。そうですよね、自分から名乗らずに失礼しました。タカヒロって言います」
「・・・タカヒロくん?」
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