『センス・オブ・ワンダーを探して』

本当にわかっているときに放つ「わかりました。」
ちょっと気になることがあるけど理解はできているから返す「わかりました。」
いまいち分からない部分があるけどとりあえず大筋は理解しているから答える「わかりました。」
分かっていないけどつい言ってしまう「わかりました。」

目の動き、手元の動作、返事の抑揚。あらゆる仕草や表情から、少しずつ本音は漏れ出している。生徒の返事が字面通りのそれでないと分かると、僕は「あぁこいつ分かってないな。」という嘆息を忍ばせ、どうにか違う説明の仕方を模索する。塾講師として働いていた学生時代、何度も痛感したことだ。難しいことを簡単に説明するのは難しい。

受験用と謳われた英文法の参考書を何種類も読む。もっと、もっと分かりやすい説明の仕方はないのかと。難しいことを難しく説明するのは簡単なのに、その逆はいつだって難しい。問題の答えはひとつと決まっていても、その解法への道筋は数限りなくある場合すらある。そう、『難しいことを簡単に説明する』方法には正答が存在しない。

書店に行けば星の数ほど存在する参考書、新書、雑誌の類。難解な話題や問題を噛み砕いて説明しようとする種類の書籍は数多く存在するが、えてして難しいものは難しく書かれていることが多い。しかし、その中にももちろん、『例の正答』に限りなく近づいているような書き手は存在する。専門的なトピックにも関わらず門外漢にも分かりやすく、飲み込みやすく書ける天賦の才を持った作家。そして、分子生物学者の福岡伸一さんはそんな稀有な才能を持つ作家のうちの一人なのではないか、と僕なんかは推察するのだ。

センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます~

福岡 伸一 , 阿川 佐和子 (著)

母校の教授ということもあり当時から評判はかねがね聞いていましたが、それを勘定に入れなくとも数少ない僕の大好きな作家のひとりです。

本書は阿川佐和子さんとの対談という形をとっており、今まで以上に分かりやすい口語文での生物・分子生物学のあれやこれやが語られています。ちなみにセンス・オブ・ワンダーとは『神秘さや不思議さに目を見はる感性』というもの。その人を生涯支えていく大事な要素と説明されています。

昆虫が好きで将来生物学者になるのが夢だった福岡少年の熱っぽい語り口はまさにセンス・オブ・ワンダーの塊。『ルリボシカミキリの青に魅せられて』、『フェルメールは分子生物学の父を描いたのか』、 『死をコレクションしても、生のことはわからない』。こんな見出しに心躍る方には一読の価値があるでしょう。「生命のささやきに耳を澄ます。」という一文があらわすように、五分の魂というミクロなささやきは、やがて僕ら人類の生きる意味というマクロな叫びに敷衍する。

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そして本書は偶然にも去年知り合った虫大好きお姉さん、宇佐美朋子さんが装画をされています。これはほんとうにびっくり!僕も先日いくつか作品を購入させてもらったばっかりなのです。

ぜひ写真を拡大してご覧になってみてください、とっても可愛いですよ!装画の蝶もクール!
宇佐美朋子さんのHP: http://usamitomoko.com/index.html

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あ、そうそう。本書は非常に分かりやすく書かれてはいますが、完全に理解しようとするとそこはやはり分子生物学、難しいです。前述の例を再び持ち出せば僕は「いまいち分からない部分があるけどとりあえず大筋は理解しているから答える『分かりました。』」の生徒に分類されるでしょう。まぁ基礎的な勉強なしに理解できると思うなんて、ちょっと虫がよすぎる話なのかもしれませんね。

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