T-Shirt underground

「・・・」
 
しまった、完全なる過失だ
 
よりにもよって僕は恋するTシャツを着てしまったのだ
 
 
そのような種のTシャツの脅威が、テレビの臨時ニュースや電車の中吊り広告などで
話題になり始めてからもうすぐ二ヶ月になる
 
それにも関わらず、メディアから伝えられる彼らの(もしくは彼女らの)恐ろしさと、僕の周りでの
実際的な被害は決して正比例することはなかったのだ
 
だから僕は、飛行機事故のニュースが報道される時と同じく完全に油断していた
 
 まさか僕は被害者とならないだろう
 
というふうに
 
その精神的な甘さが見えない鎚となり、僕の警戒心のようなものをベルリンの壁よろしく
完膚なきまでに打ち砕いてしまっていたのだ
 
でなければTS厳戒態勢が引かれた現在、贈答として送られたTシャツなんかに
風呂あがりだからといって無造作に(そう、僕はその時、柄さえも確認しなかった)
袖を通したりするはずがないのだ
 
 
姿見に映った自分の姿を見つめながら、今となってはもうこんな後悔など
塵芥ほどの価値もないことを痛感した
 
僕の体の中の成分は一秒ごとに変革しているようで、体の自由がほとんど効かなくなってきたからだ
 
目の届く距離の場所にあった茶色いカーゴパンツと買ったばかりの黒いデニムのジャケットを身に付け
僕と言えない僕は太陽が迫害された夜の世界へと踏み出していった
 
このときには、身体はもちろん精神的にも僕は完全にそのTシャツに乗っ取られてしまっていた
 
Tシャツに支配された僕は、最初に視界に入った女性に突然声をかけた
 
 結婚してください
 
丑三つ時を過ぎた時刻にこんな言葉を投げかけられる彼女に同情しながら、こんな状態でも
自分の心配が出来ていない自分に呆れた
 
彼女は不審がり足早にその場から去って行った
 
そんな具合にしてその謎のTシャツたちは人類を滅亡させていくつもりらしい
 
困ったものである
 
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