Daydream Before Christmas

いつもの歩き慣れた通りを、いつもと同じように歩いていた
 
時刻はちょうど正午を過ぎたあたりで、あたりは平和な暖かさに満ちていた
 
こんな陽気のときにはサンタクロースでさえもバカンスに出ているに違いない
 
そんなとりとめのないことを考えながら路地の角を曲がると、そこにはサンタクロースがいた
 
赤と白の二色で統一された帽子と洋服を着て、自分の背丈ほどはあると思われる袋をかついでいた
 
あるいは今が12月であったら、僕は今目の前にいる彼をサンタクロースだと認識するのかもしれない
 
だけれどもちろんこの世界はまだ9月で(僕が認識している限りでは)、サンタクロースである彼が
こんな住宅地の真ん中を昼間に歩き回る理由なんて何一つとしてありはしないのだ
 
少し遠くから靴ひもがほどけたふりをして様子をうかがっていると、どうやら彼は失くしてしまった何かを必死に捜しているように見えた
 
中肉中背で、ひげすらもたくわえていない彼はいささか非サンタクロース的ではあったが
 
この陽気の中、まるで季節外れの厚着で何かを捜し求めるというその行為には好感が持てた
 
 何かお捜しですか
 
ありあわせの好奇心と勇気をふりしぼって僕は訊ねた
 
 ええ、先ほど落しものをしてしまったのであります
 
こちらの方を少しも見ずにサンタクロースは答えた
 
 それは大事なものなのですか
 
僕は訊ねた
 
 そうです、大事といえば大事ですし、そうでないといえば瑣末なものであります
 
彼の言うことは少し理解できなかったが、僕もその“何か”を捜すのを手伝うことにした
 
その旨を伝えると、汗をたっぷりとかいたサンタクロースはまるで関心のないように小さく頷いた
 
 
 
数分が経過したのち、彼が突然こちらを向きながら叫んだ
 
 ありました、まさに見つけようとしていた理想的なものであります
 
何かを手に取るでもなく、ただ僕を見つめながら満足そうな笑みを顔一面に広げていた
 
 ありがとうございました、このご恩はクリスマス20回分忘れんであります
 
そう言い残して、まるで風のように彼は走り去っていった
 
 
家に帰り、夢のような現実から覚めるために自分の顔を見て初めて変化に気づいた
 
あごひげと口ひげがすっかりなくなり、だいぶ頬がこけていた
 
見慣れない自分の姿に驚きながら、これはこれで悪くないなと思った
 
 
それ以来クリスマスになると、僕の家には立派なクリスマスケーキが届く
 
「ひげのないあなたへ」というメッセージと共に
 
広告
カテゴリー: Uncategorized パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中