unstoppable

僕とそのライオンはずっと一緒にいた
 
その、ずっと、はあらゆる意味の上でのことである
 
精神的にももちろん、実際片時も傍を離れていなかったと言っても過言ではない
 
近くにある、僕らの庭みたいな大草原に散歩に行くときも
 
お腹が空いて、一緒に獲物を狩りに行くときも
 
満点の星空の下、お互いの夢について語り合っているときも
 
 
ただ、あまりに近くにいることに慣れてしまって
 
お互いが手の届かない場所に行くことなんて、考えることは出来やしなかった
 
 
動物園のおとなの人が突然やってきて
 
 君のライオンは、他の人には危険だから私達がカクリシテ、ホゴスルことになったよ
 
と言ったときでさえ、全く実感なんて沸かなかった
 
おそらく、それは太陽が地球の周りを回るのと同じくらい、非現実的に過ぎたのだ
 
そして、そのようなものを実感できる人種をおとなと呼ぶならば
 
僕らはあまりにもこどもであり過ぎたのだ
 
 
動物園のおとなの人たちがそのライオンを迎えに来る前日になっても
 
僕らに変化なんかほとんど何も無かった
 
もし少しでも変化のようなものがあったとしたら
 
それは、火曜日が水曜日と入れ替わった、というくらい些細なものだったのだ
 
僕らはいつものように戯れ、そしていつものように眠りについた
 
 
翌日、動物園のおとなの人たちが車に乗って僕のライオンを迎えに来た
 
ライオンは透明な箱に窮屈そうに入れられ、車の荷台へと載せられた
 
僕らはそのとき初めて気づいたのだろう
 
透明な板が二人を分かち、言葉すらも届かなくなったそのときに
 
 
変化は、五月雨を集めて解き放った河川のように僕らに襲いかかった
 
掛ける言葉もなく、僕らはお互いを見つめあうことしか出来ない
 
エンジンが小気味の良い音を立て、僕らの距離は少しずつ開いていった
 
こんなときに何も伝えられないなら、言葉なんて一握りの価値もありはしない
 
ライオンの姿が少しずつ見づらくなっていった
 
しかしそれは距離が離れたからだけではなかった
 
あふれ出る涙と感情に、僕は耐えることが出来なかった
 
 
ライオンを乗せた車が消えて見えなくなってもまだ
 
僕はその場所を離れることが出来ずにいた
 
諦めることが何よりの薬だというのに
 
どんなに気持ちを落ち着かせようとしても、それはどこにも見当たらなかった
 
僕に出来ることなんて、そうありはしない
 
今はただ祈るだけ
 
無事に着きますように、そして元気に過ごせるように
 
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